発行市場における開示制度、流通市場における開示制度

<発行市場における開示制度>

もう一度おさらいですが、

新たに発行される有価証券の取得の申し込み:募集
すでに発行された有価証券の取得の申し込み:売出し

といいます。

新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘のうち、「募集」に該当しないものは「私募」であるということは以前説明したかと思いますが、この「有価証券の私募」は、届出が不要となっています。

また、「売出し」については、一定の要件を満たす外国証券の売出しは、売出しの定義に該当するものの、「外国証券売出し」として、法定開示が免除されています。
加えて、政令で定められる場合の「私売出し」についても、法定開示が免除されます。

募集や売出しに際しての届出は発行者が行い、これによって投資勧誘を行うことができるようになります。
ただし届出の効力が発生しないと、実際に有価証券を取得したり売りつけたりすることはできません(効力発生は届出から15日を経過した日)。
また、届出を要する募集や売出しに該当しなくても、内閣総理大臣に有価証券通知書の提出をしなければならない場合があります(例:売出価額の総額1億円以上の場合)。

続いては、目論見書についてです。
目論見書の作成義務者は当該有価証券の発行者にあり、原則としてあらかじめ又は同時に投資者へ交付しなければなりません
すでに開示が行われている有価証券の売出しについては、届出は不要ですが、目論見書の交付は必要です
ただし、関係者以外にすでに開示されている有価証券については目論見書の作成と交付が免除され、適格機関投資家が取得又は売付ける場合や、諸条件により当該目論見書の交付を受けないことに同意した場合は、目論見書の交付が免除されます。

そして、発行登録制度とは、有価証券の募集又は売出しを1回以上予定している発行者で、参照方式適用会社は、発行予定期間(1年又は2年)における有価証券の発行予定額等を記載した発行登録書を提出しておけば、発行の都度、届出をする必要のない制度です

<流通市場における開示制度>

流通市場における情報開示義務を負っているのは、以下の会社です
上場会社など
・それ以外で、資本金の額が5億円以上でかつ、最近5事業年度のいずれかの末日において株主数が1000名以上の会社

有価証券報告書は原則として、事業年度ごとに、経過後3か月以内に内閣総理大臣へ提出しなければなりません。

また、有価証券報告書の提出を義務付けられている上場会社等は、
四半期報告書を各期間経過後45日以内に提出、それ以外はの会社は半期報告書を期間経過後3か月以内に提出
・(該当する場合)臨時報告書の提出
があります。

親会社等状況報告書は、有価証券報告書提出会社を除く上場会社の親会社等が提出しなければなりません。

不公正行為に関する規制

金融商品取引法では、不公正行為に関して、さまざまな規制がなされています。

ただし、その度合いによって、以下のように分類することができます。

<「何人も」あてはまる行為>
・不公正取引禁止の包括規定

・虚偽又は不実の表示の使用の禁止

・虚偽の相場の利用の禁止

・風説の流布、偽計取引の禁止

・相場操縦行為の禁止(特に厳しく禁止されている)
この中には、仮装売買(権利の移転、金銭の授受等を目的としない仮想の取引)の禁止、馴合売買(自己が金融証券の買付けや売付けやデリバティブ取引の申し込みを行う際、同価格で他人とそれをあらかじめ通謀すること)の禁止、市場操作情報の流布の禁止も含まれます。

・虚偽の相場の公示等の禁止

<「何人も」とあるが、実際には例外規定がある行為>
・政令に違反した安定操作取引の禁止
 つまり政令に従えば認められる場合があるということです。

<その他禁止や規制などにおいて、例外規定がある行為>
・対価を受けて行う新聞等への意見表示の制限

・内部者規制取引(インサイダー取引)の禁止
インサイダー取引の規制対象となる者は、有価証券の発行会社の従業員や役員など関係者が主ですが、その中には取引銀行公認会計士、顧問弁護士、さらには、会社関係者でなくなったがそこから1年以内の者も含まれます。
規制対象となる重要事実は多くありますが、それら重要事項を行うことの決定や、それら重要事項を行わないことの決定も、重要事項に含まれます(ただし、重要事実から除外される条件も用意されています)。
そして、インサイダー取引の適用除外としては、株式の割当てを受ける権利を有する者の株券取得や、新株予約権の行使により株券を取得する場合、その他です。

登録金融機関業務に関する行為規制(書面交付・説明義務)

金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ顧客に対して契約締結前交付書面を交付しなければなりません

契約締結前交付書面は、当該金融商品取引業者等の名称又は氏名、住所、登録番号、契約の概要、顧客が支払うべき対価に関する事項、損失が生ずるおそれがある旨、損失額が依拠拠出金などを上回るおそれがある旨、その他重要なものとして内閣府令で定める事項が書かれています。

なお、交付しなければならないのはあくまで原則であって、以下の場合は契約締結前交付書面の交付義務が適用除外となります。

・過去1年以内に上場有価証券等書面(包括的な書面)を交付している場合(一部除く)
・過去1年以内に当該顧客に対して、同一内容の金融商品取引契約について契約締結前交付書面を交付している場合
契約締結前交付書面に記載すべき事項のすべてが記載されている目論見書を交付している場合
・すでにある契約内容を一部変更する場合で、契約変更書面を交付している場合

またこれとは別に、金融商品取引契約が成立したとき(やその他のとき)も、遅滞なく書面を作成して顧客に交付しなければなりませんが、交付しなくても公益又は投資者の保護に支障を生ずることがない場合はこの限りではありません。

取引態様に関しては、金融商品取引業者等は事前に顧客に対して、自己がその相手方となって当該売買もしくは取引を成立させるのか(仕切注文)、又は媒介し、取次し、もしくは代理して取引を成立させるのか(委託注文)を明示する必要があります。

金融商品取引法ではクーリング・オフの規定がなされており、当該金融商品取引契約に係る書面を受領した日から起算して10日を経過するまでの間は契約を解除できます

ただしクーリング・オフは投資信託など有価証券の売買取引には適用されないので、注意しましょう。

また、金融商品取引業者等は、勧誘をしていない顧客に対し、訪問や電話で当該金融商品取引契約の締結を勧誘することは禁止となっています(不招請勧誘の禁止)。

ただし、こちらも投資信託など有価証券の売買取引には適用されません

そして最後に、金融商品取引業者等は、勧誘に先立って顧客に意思の有無を確認しないで勧誘してはなりませんし契約を締結しない旨の意思表示をした顧客に当該勧誘を継続することは禁止となっています。

ここまでくるとうっとしいかもしれませんが、こちらも投資信託など有価証券の売買取引には適用されません

金融商品取引業の分類

法律上では、金融商品取引業を原則として登録制にしています。

そして、以下の4つの分類によって、業務内容などに応じた要件を定めています。

第一種金融商品取引業
従来の証券業(保護預かりを含む)、金融先物取引業など

有価証券に係るさまざまな行為をすることができ、例えば、売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引、その媒介、取次又は代理をすることができます。
また、有価証券の引受けや、有価証券等管理業務もこの第一種金融商品取引業に含まれます。

第二種金融商品取引業
従来の商品投資販売業、信託受益権販売業など

投資助言・代理業
従来の投資顧問業など

投資運用業
従来の投資一任契約に係る業務、投資法人資産管理業投資信託委託業

これら4つの分類と、それぞれの具体例を頭に叩き込んでおきましょう。

なぜなら後のほうでそれぞれがバラバラに登場するからです。

金融証券取引法上の有価証券

有価証券の範囲は、金融商品取引法第2条第1項に規定されています。

国債証券

地方債証券

・資産流動化法に規定する特定社債券

社債券

株券と新株予約権証券

・投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券

・貸付信託の受益証券

・法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形のうち内閣府令で定めるもの(コマーシャルペーパー、CPとも

・抵当証券法に規定する抵当証券

・外国又は外国の者の発行する証券又は証書で上記の性質を有するもの

・その他(例:CARDsなど)

以上のものにあてはまる有価証券において、有価証券表示権利は当該権利を表示する有価証券が発行されていなくても、有価証券とみなされます。

また、支払手形は有価証券の範囲外なので、注意しましょう。

さらに、いわゆるみなし有価証券という存在もあり、以下のものが当てはまります。

信託の受益権

・合名会社もしくは合資会社の社員権(政令で定めるもの)又は合同会社の社員権

集団投資スキーム持分(出資者が出資又は拠出した金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当又は財産の分配を受けることができる権利のうち、一定のものを指す)

・その他

金融商品取引法の適用対象となるデリバリティブ取引には、次のようなものがあります。

・市場デリバティブ取引
金融商品の先物取引、オプション取引、スワップ取引などが当てはまり、金融証券市場において行われます。

・店頭デリバティブ取引

・外国市場デリバティブ取引

金融商品取引法:概要

本日から新しい項目である「金融商品取引法」についての説明を進めていきます。

これ以降、「債権」に至るまでひとつひとつの章が長く、また問題に出題される重要な用語や知識も増えてくるので、心してかかりましょう。

さて、金融商品取引法は以下のような内容で構成されています。

・金融商品取引法上の有価証券

・金融商品取引業者と金融商品取引業

・金融商品取引業の分類

・金融機関の有価証券関連業(登録金融機関業務)

・外務員制度

・登録金融機関業務における行為規制
この中にはさらに、一般的義務、書面交付・説明義務、投資勧誘・受託に関する規制、市場阻害行為に関する規制、親法人等又は子法人等に係る規制、登録金融機関その他業務に係る禁止行為、が含まれます。

・特定投資家制度

・金融商品仲介業制度

・信用格付業者

・指定紛争解決機関

・不公正行為に関する規制

・企業内容等開示制度

・発行市場における開示制度

・流通市場における開示制度

・開示書類の公衆縦覧

・証券取引等監視委員会

・課徴金制度

これらの中でも特に、「登録金融機関業務に関する行為規制」や「特定投資家」に関する事項は試験に頻出です。