模擬試験の活用(2)

前回は無料で使える模擬問題の紹介をしましたが、残念ながら無料のものだといくつか問題点が出てきてしまいます。

もちろん、証券外務員に限った話ではないのですが、いくつか例を挙げると、
・最新の情報や問題傾向に対応していない(特に変更があった場合)
・問題の質や量が限定的(数そのものが少ないため、網羅できていない)
・不確実な内容が含まれている可能性
などが挙げられます。これらの心配をなくすためには、やはり1冊は問題集を用意しておいたほうがいいと思います。

こちらが対策用として使える模擬問題となります。有料にはなってしまいますが、参考書としても活用できるため、知識を深めたり定着させるには絶好の教材だといえるでしょう。

2016/17年度版 最短合格 特別会員 証券外務員一種・二種
FPの試験の運営などでおなじみの、きんざい(一般社団法人 金融財政事情研究会)の関連会社から発売されているテキストです。
毎年内容が改定されるため、当然のことながら最新の情報に対応していることはもちろん、効率的な学習計画にも使えます。

せっかく学んでいるのですから、合格のための確実な道筋を作っておきましょう。

模擬試験の活用(1)

実際に証券外務員の試験を受けるにあたって、このブログや参考書(次回以降に紹介します)を使って知識を蓄えた後はすぐ受験ということになりがちですが、やはり試験である以上、事前に模擬試験を受けておいたほうがよいでしょう。
また、これから勉強に本格的に取り掛かるという方でも、先に問題の形式を見ておけば、時間がない場合での学習にも役に立ちます。

模擬試験は有料で受験可能なタイプと無料で利用できるタイプの2通りに大きく分かれており、有料タイプは本として発売されているものとインターネットで直接受けるもの、無料タイプは基本的にネット上のものとなっています。

しかし、正会員向けの模試は数多くあれど、特別会員向けの模試というのはそうたくさんあるわけではなく、見つかったとしても古い情報に基づく問題が混ざっていることがあるなど、よく選ばなければなりません。

そこで今回は、インターネット上で見つけた特別会員向けの無料WEB模試をここに掲載します。
実際に受けてみたのですが、本試験の内容や知識に対応していると感じた模試ですので、活用してみてはいかがでしょうか。

証券外務員無料WEB模擬試験(フィナンシャル バンク インスティチュート株式会社様)
本試験と同じ問題数やパターンで作られており、合格ラインも同じ70%が設定されています。
特別会員1種用と特別会員2種用とがそれぞれ別に用意されていますが、問題の内容が変わることはないため、毎日受けるのではなく1回限りという前提です。ただし、時間があるのなら1か月程度間を置きながら何回かチャレンジしてみるのもよいかもしれません。

特別会員でも資格を使う会社は増加傾向

このブログの題名にも使っている「特別外務員」とは、外務員の中でも「特別会員」という立ち位置になります。

外務員にはこれとは別に「正会員」と呼ばれる地位があるのですが、特別会員は正会員に比べてある程度できる業務が制限されていること、そしてそれに伴い資格試験の範囲が狭くなっていることが違いといえます。
(ただし、必ずしも範囲が狭い=試験が簡単ということではないため、十分に注意する必要があります)

しかし、だからといって特別会員は業界から相手にされていないかと言えばそうでもなく、むしろ昨今の傾向としては需要が高まっているという話も聞きます。

私の知っている限り、とある大手企業では正会員と特別会員に差をつけない形での「外務員」というくくりで採用しているなど、特別会員を高く評価している場合もあるのです。

だからこそ、これから金融に興味を持っている学生さんたちには、特別会員でもよいので外務員の資格の勉強を早めにしてもらいたいのです。

金融に関連した職場では、どうせ取得しなければならないでのすから、ぜひ目を通しておくべきでしょう。

特定投資家制度

特定投資家と一般投資家の区分については、互いに立場を変更できる条件や、行為規制の適用範囲の違いなどがあります。
まずは一般投資家と特定投資家、さらに後者の一部となっている適格機関投資家の区別について説明します。

<一般投資家に移行できない特定投資家>
適格機関投資家、国、日本銀行
(適格機関投資家には、銀行や金融商品取引業者、保険会社、信用金庫、有価証券残高10億円以上の法人有価証券残高10億円以上で金融商品取引業者等に口座を開設してから1年を経過している個人などが含まれます)
上記太字の者に対しては、内閣総理大臣への届出制となっており、適格機関投資家に係る届出の有効期間は2年とされています。

<選択により一般投資家に移行可能な特定投資家>
投資家保護基金、政府系機関、預金保険機構、保険契約者保護機構、外国法人、上場会社、資本金5億円以上と見込まれる株式会社等

<選択により特定投資家に以降可能な一般投資家>
地方公共団体、特定投資家以外の法人、一定の要件を満たす個人等

<特定投資家に移行できない一般投資家>
上記3項目に該当しない個人

続いては行為規制に関する話です。

<特定投資家に対して適用除外となる主な行為規制>
広告等の規制
・不招請勧誘の禁止
・勧誘受諾意思確認義務及び再勧誘の禁止
適合性原則
・取引態様の事前明示義務
契約締結前、契約締結時等の書面交付義務
・クーリング・オフ
・最良執行方針等を記載した書面の事前交付義務
・顧客の有価証券を担保にする供する行為等の制限
・その他

なお、「契約締結時等の書面交付義務」については、顧客から個別取引に関する照会に対して速やかに回答できる体制が整備されていない場合、適用除外となりません。
また、一般投資家が選択により特定投資家に移行することについて勧誘するときは、適合性原則が適用されます

<特定投資家から一般投資家への移行:詳細>
移行の申し出を受けた金融商品取引業者等は、勧誘又は取引までに、原則としてその申出を承諾しなければなりません
移行した場合の効果は、当該顧客が特定投資家への復帰を申し出るまで有効となります。

<一般投資家から特定投資家への移行:詳細>
以下の要件を満たす必要があります。
・純資産額が3億円以上
・投資性のある金融資産の合計額が3億円以上
・その相手となる業者と申出に係る契約の種類に属する契約を最後に締結してから1年を経過していること
移行した場合の効果は、1年とされています。

金融商品仲介業制度

金融商品仲介業は、第一種金融商品取引業を行う金融取引業者や登録金融機関の委託を受けて業務を行います。

金融商品仲介業は、内閣総理大臣の登録を受ける必要がありますが、法人個人を問わず登録を受けることができます

登録の際は登録申請書を提出しなければならず、特に「委託を受ける第一種金融商品取引業もしくは投資運用業を行う金融商品取引業者又は登録金融機関の商号又は名称」は重要なポイントです。

また、顧客や金融商品仲介業者自身と関係のある者から金銭もしくは有価証券の預託を受けてはいけません
顧客に対しては事前に、「所属金融商品取引業者の代理権がない旨」や「金銭もしくは有価証券の預託の禁止」を明らかにする必要があります。

金融商品仲介行為又はその勧誘を行う者は、外務員登録を受けなければなりません。

所得の分類、課税の分類と有無

<所得の分類>

公社債投資信託の分配金:利子所得

(個人の)株式投資信託の換金差益・償還差益:譲渡所得
(法人の)株式投資信託の換金差益・償還差益:配当所得

利付債の利子:利子所得
利付債の償還価額と取得価額の差益:雑所得

<課税の分類と有無>

・投資信託
追加型:普通分配金は課税、元本払戻金は非課税
単位型:区分はなく全額が課税
個人の場合:所得税と住民税が源泉徴収、ただし確定申告により総合課税または申告分離課税も可(申告分離課税なら損益通算できる)
法人の場合:所得税が源泉徴収、住民税の徴収なし

・利付債
利子:源泉分離課税(所得税15.315%+住民税5%)
償還価額と取得価額の差益:総合課税、要確定申告

・公社債の譲渡、公社債投資信託の譲渡
非課税

・割引債の償還差益
発行時に源泉分離課税(所得税18.378%)、確定申告不要

その他の金融商品取引業務

<特定社債券等>
特定社債券等は、特定目的会社(SPC)により発行される金融商品取引法上の有価証券で、資産担保型証券(ABS)の一種です。
登録金融機関は、これら特定目的会社の発行証券の引受け及び募集の取扱い等を行うことができます。

<CARDs>
CARDsとは、海外の金融機関の貸付債権を信託した資産金融型商品です。

外国証券の契約を締結しようとするときは必ず、顧客に外国証券取引口座に関する約款を交付し、当該顧客から約款に基づく取引口座の設定に係る申し込みを受けなければなりません。
ただし、すでに約款を交付していて、改めて交付する旨の申し出が顧客からない場合は、交付不要です。

また、協会員はCARDsの発行者から交付された通知書及び資料等を、当該協会員から到達した日から3年間保管し、当該顧客の閲覧に供さなければなりません
(海外CP及び海外CDのの場合は1年です)

<金融機関と有価証券関連業>
銀行やその他の金融機関は、書面取次ぎ行為を行うために、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。

国内CP及び短期社債、海外CP及び海外CD

<国内CP及び短期社債>
国内CPは、企業が機関投資家等から無担保で短期の資金調達を行うための手段で、金融商品取引法上の有価証券となっています。
当該法人(企業)の委任によりその支払を行う金融機関が交付した「CP」の文字が印刷された用紙を使用して発行します。
ちなみに、金融機関自体もCPの発行主体となることができます。

電子CPは「社債、株式等の振替に関する法律」に基づいて発行される「短期社債」であり、金融商品取引法では「社債券」として分類されています。

勧誘の際は、「発行体等に関する説明書」等を顧客の求めに応じて交付する等の方法により、発行者情報及び証券情報の説明に努めるものとされています。

勧誘を行わずに国内CP及び短期社債の売付け又は売付けの媒介を行う場合には、注文が顧客の意向に基づくものである旨の記録を作成の上、整理保存するなど適切な管理を行う必要があります。

注意点としては、国内CP及び短期社債のディーリング業務に係る有価証券等ついての投資目的の売買業務等を一体として行っていないか、いわゆる機微情報の流出入の遮断等に十全を期することになっているか、などがあります。

<海外CP及び海外CD>
協会員は、海外CP及び海外CDの売買その他の取引の勧誘等を行うに当たって、日本証券業協会の「外国証券の取引に関する規則」によるものとされています。

外国証券の契約を締結しようとするときは必ず、顧客に外国証券取引口座に関する約款を交付し、当該顧客から約款に基づく取引口座の設定に係る申し込みを受けなければなりません。
ただし、すでに約款を交付していて、改めて交付する旨の申し出が顧客からない場合は、交付不要です。

協会員は、海外CP及び海外CDの発行者から交付された通知書及び資料等を、当該協会員に到達した日から1年間保管し、顧客の閲覧に供しなければなりません

債券売買手法

<入替売買>
同一の投資者が、ある銘柄を売るとともに別の銘柄を買うというように、同時に売り買いを約定する売買手法のことです。

・市況観に基づく入替え
将来金利が低下するという市況観を持っている場合、短中期債から価格変動性の大きい中長期債へと期間を長くする入替えが有利です。

・流動性アップ入替え
将来債券を資金化したい場合、保有債券の一部を国債などの流動性の高い銘柄で、かつ価格変動リスクの小さい短期債へ入れ替えます。

・直利アップ入替え
直接利回りを高めるために、より利率の高い債券へ入れ替えます。

・最終利回りアップ入替え
できるだけ利回りの高い長期の銘柄へ入れ替えます。

・利回り軟差運用(スプレッド運用)
利率の高低、期間の長短、上場または非上場によって発生する利回り軟差を捉えて運用効率をアップさせようとするものです。

・固定的ポートフォリオ運用
短期から長期までの債券を年度ごとに均等に保有する「ラダー型」と、流動性確保のための短期債と収益性確保のための長期債のみを保有する「ダンベル型」があります。

<現先取引>
同種同量の債権等を、所定期日に、所定の価額で反対売買することをあらかじめ取り決めて行う債権等の売買のことで、債権等の条件付売買取引ともいいます。

委託現先
資金を調達したい売り方と運用したい買い方との間で金融商品取引業者等がその仲介の役割をする場合です。

自己現先
金融商品取引業者等自身が売り方又は買い方となる取引の場合です。

現先取引には以下のようなルールがあります。
・原則、約定の都度顧客に明細書を交付すること
・取引対象の顧客は上場会社又はこれに準ずる法人であって、経済的・社会的に信用あるものに限られる
・取引できるのは、国債、地方債、政府関係機関債、社債、特定社債、投資法人債などのほか、円建外債、外貨建債券も含まれるが、新株予約権付社債を除く
・原則として他人名義の登録債は取り扱わないこと
などです。

<着地取引>
将来の一定の時期に、一定の条件で債券を受渡しすることをあらかじめ取り決めて行う売買取引で、約定日から1か月以上先(翌月の応当日以降)に受渡しする場合をいいます。

以下のようなルールがあります。
・取引対象の顧客は上場会社又はこれに準ずる法人であって、経済的・社会的に信用あるものに限られる
・取引できるのは、国債、地方債、政府関係機関債、社債、特定社債、投資法人債などのほか、円建外債、外貨建債券も含まれるが、新株予約権付社債を除く
約定日から受渡日までの期間(着地期間)は6か月を超えないこと(つまり1か月~6か月で受渡しとなります)
などです。

債券市況の変動要因

<一般景気動向>
景気拡大→物価上昇→金利(貸出金利、短期金利)上昇→債券利回り上昇→債券相場低下(債券市況にマイナス)
景気縮小→物価低下→金利低下→債券利回り低下→債券相場上昇(債券市況にプラス)

<金融政策>
日本銀行が行う主な金融政策として、次の2点が挙げられます。
・基準割引率及び基準貸付利率操作:市中銀行に貸し出す金利水準を上下変動
・オペレーション:市中に流通する通貨の量を増減調節

日銀が、基準貸付利率を下げたり資金の供給量を増やしたりする政策が金融緩和であり、金利は低下し、債券市況にプラスとなります
逆が金融引締めであり、金利は上昇に向かい、債券市況にとってマイナスとなります

<為替>
円高は、輸入物価の下落により金利低下につながるため、債券市況にプラスとなります。
円安は、輸入物価の上昇により金利上昇につながるため、債券市況にマイナスとなります。

<クレジット・スプレッド>
一般に、ある国債と残存年数の等しいその他の社債等の利回り軟差のことをいいます。
発行体の信用力が上昇すれば、格付の上昇等の影響を受けてクレジット・スプレッドが縮小し、債券価格が上昇します。
逆の場合は、クレジット・スプレッドが拡大し、債券価格が低下します。